こんにちは、はーいーです。
本日は上場株式の配当金に係る税金の概要についてご紹介したいと思います。
配当金に係る税金
上場株式の配当金に係る税金は、特定口座で源泉徴収を選択されている場合、基本的には20.315%(所得税15.315%と地方税5%の合計)で源泉徴収されて終わります。特段確定申告する必要はありません(持ち株割合3%以上の大株主を除きます)。
確定申告(繰越控除)
特定口座で源泉徴収を選択しなかったり、一般口座である場合には、確定申告して納税する必要があるということはご存知と思います。
特定口座で源泉徴収を選択しても確定申告するケースとしては、例えば株の譲渡損と通算し、通算しても譲渡損が残る場合には、申告分離課税で確定申告することにより、その譲渡損を翌年以後3年以内の売却益や配当金と通算する(繰越控除)ときが代表的です。
配当控除
特定口座で源泉徴収を選択していて、配当金のみの場合ですと確定申告する必要はありませんが、確定申告した方が有利なケースがあります。
それは、配当控除という課税所得1,000万円まで配当金の額の10%を税額控除できる制度を利用する場合です(総合課税での申告になりますので、株の譲渡損との通算ができる申告分離ではありません)。
例えば、課税所得が695万円に満たない場合、所得税率は20%ですので、20%(配当金に係る税率) – 10%(配当控除) = 10%(納付する税率)ということで、源泉徴収される所得税15%を5%下回るため、源泉徴収された所得税15%のうち5%分の還付を受けられます(もしくは、納付額が減る)(簡便的に復興所得税0.315%は省略しています。以下同じです)。
具体的には、給与額面が900万円で配当金を年間100万円受領されている方であれば、ざっくり5万円の還付が受けられます(後段でも記載しますが、住民税は申告不要を選択しない場合、2.2万円の納付が発生します)。
注意点は、配当金も所得に加わりますので、給与と配当金の合計で考える必要があるということです。
(厳密には課税所得900万円までの所得税率23%でも15%を下回りますが、住民税で同じ申告方法をとった場合を考慮すると、ほとんど差がなくなりますので、分かり易く695万円としています)
では課税所得695万円とは、給与収入で考えると幾らになるかといいますと、社会保険に加入している会社にお勤めであれば、額面が1,000万円くらいなら課税所得は695万円未満で収まります。つまり、かなり多くの人が、確定申告した方が有利ということです。額面1,000万円というのも扶養控除等未考慮なので、扶養控除等があれば額面は更に上がります。
更に言うと、配当控除は10%ですので所得税率10%となる課税所得330万円未満の方である場合、配当金に係る源泉所得税の全額還付という計算になります。課税所得330万円未満というと社会保険に加入している会社にお勤めであれば、額面はざっくり580万円くらいでしょうか。
これまで特定口座で源泉徴収されて完了だから確定申告してこなかった方も多いと思いますが、今年は検討頂いても良いかと思います。最近のETAXは以前に比べて大分便利になっている印象です。
なお、確定申告していない場合、最大過去5年遡ることができますので、今からでも間に合います。医療費控除等を受けるため、確定申告してしまっていると、配当金の申告方法も合わせて申告していると考えられてしまうため、更正の請求で還付を受けることはできませんので、ご留意ください。
配当控除の注意点
配当控除には大きく6点の注意点があります。
1.外国株式の配当には配当控除の適用はなく、日本株のみの投資信託以外の投資信託からの配当金ですと配当控除の適用がなかったり、控除率が下がります。例えば、米国株式やREITのみで運用されている方は、残念ながら適用がありません。
2.住民税の配当控除は2.8%で、住民税率は5%ですので、申告することにより住民税は2.2%分の納付が出ます。じつは、令和3年以前分は所得税と住民税の配当金の申告方法を変えることができます。そのため、所得税と住民税の申告方法を変えることにより(所得税は総合課税で確定申告、住民税は申告不要)、税率23%の方でも、確定申告有利になっています。ただ、令和4年度税制改正で、所得税と住民税の申告方法を一致させる必要が出てくる可能性があるため、本稿では所得税と住民税の申告方法を一致させる場合としています。
3.配当控除を受けるためには、総合課税での申告になります。例えば、株の譲渡損があった場合、配当金と譲渡損を通算するためには、申告しない、もしくは申告する場合でも申告分離課税という制度を選択する必要があります。つまり、譲渡損を配当金と通算させたうえで、残った配当金について配当控除を受けるということはできません。
4.パートやアルバイトで年収を103万円以内に抑えて配偶者控除や扶養控除の対象になっている方は、配当金を申告することにより所得が増えますので、パートナーの配偶者控除やご家族の扶養控除が受けられなくなってしまうことがあります。例えば親御さんの扶養に入っている学生で、アルバイトで額面100万円、配当金が5万円あった場合、確定申告することにより扶養の基準をオーバーしてしまいますので、親御さんの税金が増え、家族トータルで見た場合、かえって納税額が増えるということにもなってしまうケースもありますのでご注意ください。
5.上記4に関連しますが、配当金も所得に合算されます。つまり、配当金しか収入が無い方で考えると、ざっくり配当金1,000万円について配当控除を受けることが可能です。ただ、基礎控除48万円のみですと税率が33%で課せされるところまで所得が上がってきてしまいます。配当金1,000万円のみで確定申告した場合、配当控除の適用を受けても概ね60万円程度の納付になります。配当金1,000万円の源泉所得税は150万円ですので90万円の還付にはなりますが、全額還付ではありませんのでご留意ください。
6.確定申告しますと、所得を基準に算定されています制度、例えば国民健康保険料、高等学校就学支援金制度、保育園の負担額などに反映されてまいりますので、その負担増も考慮頂いた方が良いケースもあります。
国税庁の以下のHPも大変参考になりますので、ご参照ください。
No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度|国税庁 (nta.go.jp)
また、確定申告(上場株の損益通算と繰越控除など)については、以下をご参照ください。
本稿は現時点(2021年12月29日)の法令に基づいて記載しています。また、一般的な記載としておりますので、本稿に基づいて申告等行う場合には、事前に関連する専門家にご相談されることをお勧めいたします。
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